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高森明勅
2023.11.3 07:00皇統問題

皇室の伝統は男系継承でなく「国民と苦楽を共にする」こと

皇室の伝統は「男系継承」という意見を時折、耳にする。
しかし、皇室ご自身のお考えは違う。

それがはっきりと示されたのは平成17年に小泉純一郎内閣の時に
設けられた「皇室典範に関する有識者会議」の報告書が
提出された場面でのこと。

同年の天皇誕生日に際しての記者会見で、
記者側から次のような質問が出された。

「皇室典範に関する有識者会議が、『女性·女系天皇』容認した
方針を打ち出しました。
実現すれば皇室の伝統の一代転換となります。
陛下は、これまで皇室の中で女性が果たしてきた役割を含め、
皇室の伝統とその将来についてどのようにお考えになっているか
お聞かせください」

これに対する上皇陛下のお答えは以下の通り。

「皇室の中で女性が果たしてきた役割については私は
有形無形に大きなものがあったのではないかと思いますがに
皇室典範との関係で皇室の伝統とその将来についてという
質問に関しては、回答を控えようと思います。

私の皇室に対する考え方は、天皇及び皇族は、
国民と苦楽を共にすることに努め、国民の幸せを願いつつ
務めを果たしていくことが、皇室の在り方として望ましい
ということであり、またこの在り方が皇室の伝統ではないかと
考えているということです。

女性皇族の存在は、実質的な仕事に加え、公的な場においても
私的な場においても、その場を空気に優しさと温かさを与え、
人々の善意や勇気に働きかけるという、非常に良い要素を
含んでいると感じています」

国政権能を有されない憲法上のお立場に慎重な配慮を
されながらも、「女性天皇·女系天皇を認める報告書の提案に
従って皇室典範の改正がなされても、皇室の伝統そのものに
何の差し障りもない」というお考えが、かなりストレートに
伝わる言い方をなさっていたことに気付く。

皇室の伝統とは狭い男系継承ということではなく、
ひたすら「国民と苦楽を共にすること」である、と。

皇室の伝統をどう理解するかについては、国民が各自勝手な
私見を振り回すのではなく、皇室ご自身のお考えを最も
尊重するのが当然だろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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